人は誰しも、理想の姿を実現していない時に、自分にその理由があるとは認めにくいものです。
どんなテーマであっても、なぜ理想が実現していないのかを考えた際、周囲や環境に原因を求めたい部分があるはずです。
コーチはこの部分、つまり「他責」の原因を先行して聞いていきます。
聞くことでその人の「やむを得ない部分」を受けて止めることが重要です。
受け止めてあげると、クライアントには胸のつかえが下りたような安堵感がもたらされます。
心の余裕が生まれてから、コーチは次のステップとして、ギャップを生み出す原因のうち「自責」の要因に意識を集中させていくのです。
コーチングを成功させるには、クライアントが自責の視点に立つことが不可欠ですが、急ぎすぎると返って立ちにくくなります。
Aさんがすでに「自分を変えたい」という自責の視点に切り替わっていることを感じたコーチは、Aさんに自責の視点でギャップを生み出す要因について聞くことにしました。
コーチ「「親から教えられた」「同級生に反対された」「周囲から重宝された」というお話を伺いましたが、これらは全て周囲が喜んでくれたとか、周囲が怒ったからという種のお話だと思いました」
Aさん「そうですね。周囲の期待に応えたいと思ってやってきました」
コーチ「では、周囲からどうこう言われたのではなく「いい人」を選択してやってきた理由があるとすれば、どんなことでしょうか? 自分は好きで「いい人」をやってきたということにすれば?」
Aさん「自分の意見やアイデアを全面に出すのではなく、常に先輩や上司のアイデアやノウハウを聞き出すことで、設計の技術力を高めてきた経緯があります。聞いている方がインプットは多いですから、得をしたと思うんです」
コーチ「技術力を高めるためだったんですね。他には?」
Aさん「嫌われたくないから。無難に敵を作らずやっていきたいから」
コーチ「その他にはどうでしょう?」
Aさん「議論で聞き側に回っていると、十分に情報収集してから発言できるので、より的確な発言ができます」
コーチ「ということは、「いい人」でいるメリットはやっぱりたくさんあったじゃないですか。今後もそのメリットを享受するために「いい人」をやめる必要はないんじゃないですか?」
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