Theコーチング

普段何気なく使っている手法や考え方を改めて言葉に落とす、暗黙の了解を形式知化するという作業に取り組んでいます

個別対応

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個別対応とは、クライアントの特徴や思考、行動パターンなどに注目してコーチが柔軟にクライアントそれぞれへの対応方法を変えながら関わっていくことです。

個別対応を実行した監督

目標達成までのスピードを加速させるためには、クライアント1人ひとりに「個別対応」することが効果的です。

なぜなら、行動を加速させる「スイッチ」は人それぞれ違うからです。

オリンピックメダリストを育成した、マラソンの小出義雄監督は、選手の正確に合わせた個別対応の育成スタイルが有名です。

強みを活かし、弱みやコンプレックスをコミュニケーションで解消していく小出監督の育成方法は、クライアント1人ひとりに注目して目標達成をより早く実現できるようサポートするビジネスコーチの方法とよく似ています。

そのためには、継続的な関わりと、双方向の対話の中で、クライアントの発言や行動をよく観察し、性格や考え方、価値観をよく把握した上で対応しなければなりません。

個別対応の上でも「クライアントのことをどれだけ知っているか」が重要になってくるのです。

個別対応の難しさ

証券会社に勤めるE氏は、毎回セッションの最後に、自分が次のセッションまでに実践することを誇らしげに宣言するのですが、次のセッションで状況を聞くと、業務の煩雑さを言い訳に行動を起こさないという状態が続いていたそうです。

E氏は何か物事を始める時、詳細な計画を立ててから行動を起こすような慎重な性格です。

そこでコーチは、「計画はその通りにはいかないものだ」という前提で、できなかった時の言い訳をなりそうなことをあらかじめ予測してもらい、それを盛り込んだ実践計画を作成、実践の場に送り出したところ、E氏は宣言通り実践できるようになったそうです。

そのコーチが別のクライアントであるF氏をコーチングした時、F氏の特徴をよく理解しないままE氏と同じ戦略をとってしまいました。

すると、行動を起こすどころか「リスクを考える時間がもったいない」「どうせ何が起こるかなんで分からない」と、方法に否定的な見方をしたのです。

その後の関わりの中で、F氏は計画を立てるのがとても苦手で、細かい計画を見るだけでも窮屈さを感じる人だということを知ったコーチは、F氏が行動した時にストレートに誉めるようにしてみました。

すると、F氏は非常に照れくさそうにしながらも喜んでいる様子で、誉めることが行動を引き出すきっかけだと分かったそうです。

このように、それぞれのクライアントの特性を理解した上で関わらなければ、よかれと思ってやったことが逆効果になる可能性もあるのです。

個別対応はテクニックを使う前提になる

コーチとして経験を積むと、当然テクニックとしてのコーチングスキルが身についてきます。

更に、テクニックを使った成功体験が多いほど、次のクライアントにも適応させようとすることがあります。

ところが、テクニックを駆使するだけでは、様々な個性を持つクライアントに対するコーチングは成立しません。

テクニックを使う前に、目の前のクライアントの特徴、状況をよく理解し、それに対応できていることが必要です。

また、自分の価値観や考え方をクライアントに押し付けてしまうコーチも考えものです。

自分自身の価値観や考え方は一旦置いといて、いつも新鮮な気持ちでセッションに臨む姿勢こそ、個別対応するために重要なのです。

テーラーメイド医療のようなコーチングを

話は変わりますが、テーラーメイド医療という言葉を知っていますか?

個別化医療、カスタムメイド医療とも呼ばれ、個人個人にかなった医療方法として研究が進められ、実用化が期待されています。

これまでの医療は疾患中心で、原因の探索やその治療法の開発に重きを置いていましたが、疾患の状態は千差万別で、同じ病気であっても同じ治療法を適用するのは必ずしも正しくないことは以前より知られていました。

一方で、個人差は治療とその効果を観察しなければ分からないものであるため、1人ひとりに対して最適な治療計画を行うのは難しかったのです。

ところが、最新の研究により遺伝子の個人差が観察できるようになりました。

遺伝子の個人差で医薬品の効果や副作用が異なることが分かり、患者にとって最も効果がありかつ副作用が最も少ない薬の種類や量、投与方法を決定する方法の研究が進められています。

コーチングにおける個別対応の概念も、このテーラーメイド医療と似ています。

「このクライアントは、以前コーチした○○さんと同じタイプだから」など、経験を積んだコーチが自分の経験に基づいたフレームワーク(枠)でクライアントを見てしまうことがあります。

自分の経験のみに頼って判断するのは、非常に危険です。

「仕事を進める際、慎重か挑戦的か」「発言の傾向は主観的か客観的か」など、コーチは様々な物差しでクライアントの情報を集めます。

物差しが多ければ多いほど、色々な角度からクライアントの特徴を知ることができます。

「クライアントの、他の人にはない唯一無二の特徴は何なのか」を探そうとする興味関心がなくては、クライアントの特徴を知ることはできませんし、本当の個別対応はできません。

遺伝子レベルでの個別化なテーラーメイド医療のように、コーチもクライアント1人ひとりの違いに注目しながら、より早く目標が実現されるべく関わりを持っています。

「タイプ分け」が個別対応するための切り口になる

コーチは、クライアントの特徴を知るために様々なフレームワークを持っています。その1つであるタイプ分けは、「人の特徴は他者とのコミュニケーションの取り方の中で最も顕著に出る」というのが前提の分類法です。

臨床心理士、組織行動学の専門家による調査・分析の結果、人を分類する際の指標として「自己主張の強さ」と「感情表出の大きさ」という2つの軸が抽出されています。

タイプ分けの目的は、クライアントを4つに分類することではありません。

どんなことに価値を置いているかを知るための切り口の1つなのです。

それをヒントにコミュニケーションを交わすことで、より早く、より深く相手との関係を構築するための手段です。

100人のクライアントがいたら100通りのタイプがいると考えるのがコーチングの大前提です。

(1)コントローラータイプ

行動的で、自分が思った通りに物事を進めるのを好みます。過程より結果や成果を重視します。リスクを恐れず、目標達成に邁進します。他人から指示されることが何よりも嫌いです。

(2)アナライザータイプ

行動の前に情報を多く集め、分析、計画を立てるタイプです。

物事を客観的に捉えるのが得意で、完璧主義者的なところがあり、ミスを嫌います。

人との関わりは慎重で、感情をあまり外側に表しません。

行動も慎重で、情報収集、状況分析、計画立案を好みます。

最後までやり遂げる粘り強さがあります。変化や混乱に弱く、安定、安全な人間関係を好みます。

(3)プロモータータイプ

自分のオリジナルアイデアを大切にし、人と活気のあることをするのを好むタイプです。

自発的でエネルギッシュ、好奇心も強く、楽しいこそ人生と思っています。

多くの人に好かれますが、飽きっぽいところがあり、1つのことを達成したり持続したりするのは苦手です。

(4)サポータータイプ

人を援助することを好み、協力関係を大切にするタイプです。周囲の気持ちに敏感で気配りに長けています。

一般的に人が好きで、自分の感情は抑えがちです。

また、人から認めてもらいたいという欲求が強いです。

 

当然のことながら、人を厳格に4つに分類することはできません。

「この人(私)は○○タイプだから」と決めつけて関わるのは簡単ですが、それでは個別対応どころかマニュアル型のコミュニケーションになってしまいます。

コーチがクライアントにタイプ分けを実施してもらった際は、「○○さんはコントローラータイプの特徴を持っている」と捉えて、更にクライアントを深く知るためのコミュニケーションを図っていきます。

皆さんもタイプ分けをコミュニケーションの参考にする際は注意しましょう。

実際、このタイプ分けだけではなく様々なフレームワークを利用し、コーチはクライアントの特徴を探っていきます。

コーチは一度貼ったレッテルを貼り替え続ける

クライアントに対して、コーチは「こういう特徴を持った人だ」と認識したものを「本当にそうだろうか」と疑い続けます。

つまり、一度貼ったレッテルを常に貼り替え続けるのです。

「前に言ったことは本心なのか」「本当にこの人はこう思っているのだろうか」と、クライアントの更に奥にあるものを探り続ける姿勢こそが、クライアントへの理解を深めることになるのです。

コーチングの3原則は同時に実行されるもの

コーチングの3原則は、どれか1つが満たされていればいいというものではありません。

どんなクライアントにでも常に3つとも満たしている必要があります。

「双方向」の対話を「継続的」に実行し、それを1人ひとり特性に合わせて「個別対応」していく。

別のページで説明するスキルも、この3つのスタンスの上でこそ機能し、目標達成の手助けとなります。

コーチングを始める時、慣れてきた時、コーチングが機能していないのではと不安な時、この3つが満たされているかをぜひ確認してみて下さい。

もし、どれか欠けているように思えたら、スキルアップよりも優先して満たすよう心がけましょう。

それが、相手を目標達成へと飛躍的に成長させる第1歩となるでしょう。


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