Theコーチング

普段何気なく使っている手法や考え方を改めて言葉に落とす、暗黙の了解を形式知化するという作業に取り組んでいます

継続性

継続性

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クライアントの目標は、到達までの期間も難易度も様々です。

双方向の対話によって顕在化した意識(気付き)は、クライアントの行動を変化させるきっかけとなりますが、目標へ着実に近づくためには、たった一度の気付きでは難しく、変化した行動を定着させるためには、更に「関わり方」の工夫が必要です。

継続して関わることでビジネス環境の変化に対応する

企業には「長期ビジョン」「当社のあるべき姿」といった目標と、目標に至るまでの戦略が存在し、社内外に提示されています。

ところが、残念ながら計画がその内容通りに実施されることは多くありません。

その要因は、社員への浸透不足やマネジメント不足などが考えられますが、日々刻々と変化するビジネス環境の中で、何が起こるかを完全に予測し、それらを全て計画に盛り込むことは不可能です。

これは個人レベルにもいえます。

ビジネスパーソンには、営業数字、開発件数など様々な業務目標がありますが、現在のように先の見えない経済環境では、一度掲げた目標に向けてどんなプロセスで何をすべきか、完全な実行計画を事前に立てて実行し続けることは難しいでしょう。

コーチは、否応なしに変わり続ける環境に対応しながら、クライアントが着実に目標達成に近づいていけるように、継続的に関わることでクライアントに起きた変化に迅速に対応していきます。

クライアントを目標に集中させる

「成功するには、せいこうするまで決して諦めないこと」これは、アメリカで鉄鋼業を興して成功したアンドリュー・カーネギーが遺した言葉です。

ホンダの創業者・本田宗一郎も「最後まで諦めなかった人間が成功している」と社員によく語っていたといいます。

どちらも、諦めず継続して行動し続けることは、成功のための重要な要素であることを示唆していますが、彼らのように大きな成功を手にした人でなくとも、皆さんの周囲で成果を上げている人には、「成功するまでやり続ける」という行動特性があるのではないでしょうか。

目標に至るまで行動し続けるのは容易ではありません。

コーチングで扱うテーマや目標には、比較的短期のものもありますが、「リーダーシップの開発」や「組織力の向上」など、長期にわたってクライアントの成長を促進させながら目標達成を支援するものもあります。

日々仕事に忙殺されがちなビジネスパーソンにとっては、長期的目標は優先順位が下がり、後回しになりがちです。

また「リーダーシップ」「組織力」という抽象度の高いテーマの場合、クライアントの行動変化や、実践によるインパクト、成果が具体的に見えにくいため、自分が目標に対してどの程度達成できているか、自分のやっていることと合っているかを判断しにくいことも、継続的な行動を困難にしている要因です。

こうしたクライアントの状況を理解した上で、コーチは継続的に関わりを持つことでクライアントを常に自分の立てた目標に集中させ、目標に向けての行動を促していきます。

コーチの役割は「意欲の向上」と「ズレの修正」

コーチングにおいて、コーチはクライアント自身の成長を目指しているわけですが、クライアントにとっては自分の掲げた目標を確実に実現することが、コーチングを受ける動機となっています。

クライアントが目標達成まで行動し続けるよう、クライアントの意欲を高め、維持することがコーチの役割となります。

また、前回のセッション後の行動を振り返り、その行動が目標達成のプロセス上、適切であるかどうかを検証し、ズレが生じている場合には軌道修正を図ります。

「意欲の維持向上」と「軌道修正」を効果的に実施するためには、こまめにクライアントとか関わり続ける必要があります。

目標達成までのプロセスをマラソンに例えるなら、ランナーのクライアントにとって、コーチングセッションは給水ポイントになります。

複数の地点でエネルギーをチャージし、これまでのルートとこれからのルートについて一緒に考えることにより、ペースやフォームの軌道修正を図りながら、より着実にコールに近づくサポートをしているのです。

クライアントの意欲を向上させるための工夫

複雑化している現在のビジネス環境では、自分1人だけで簡単に解決できる課題は少なく、自分の力のみで意欲的に目標に挑戦し続けられる人は、そう多くありません。

コーチはクライアントの目標達成、つまりマズローの欲求5段階説でいう「自己実現の欲求」を満たすべく、クライアント自身の成長をサポートしてきます。

「自己実現の欲求」に向かうためには、その前提としてビジネスという場において「所属の欲求」「自我の欲求」などを満たす必要があるのです。

コーチは、クライアントがより高い意欲を持って自己実現の欲求へと向かえるよう、「所属の欲求」「自我の欲求」などを満たす関わりを意図的にしています。

マズローの欲求5段階説
自己実現の欲求 『あるべき自分になりたいという欲求』自己目標を達成したい能力・可能性を発揮し、自己の成長を図りたい
自我の欲求 『他者からの賞賛を求める欲求』仕事を達成し、賞賛されたい、尊敬されたい
所属の欲求 『会社・家庭・国家など集団への帰属欲求』みんなに受け入れられたい、よい会社・仲間と仕事したい
安全の欲求 『生命を脅かされないことへの欲求』安定収入、危険から身を守りたい
生理的欲求 『生命を維持するための基本的欲求』食べる、眠る、飲む、排泄する

「所属の欲求」を満たすアクノレッジメント

アクノレッジメント(承認)とは、「あなたがそこにいることに、私は確かに気付いている」と相手に伝えること、相手の存在そのものを認める行為です。

ですから、承認は単に誉めることだけではありません。むしろ口先だけの誉め言葉は承認とはいえないのです。

コーチはクライアントにとって、自分が安心して存在できる場所のような存在でなければなりません。

過保護や過干渉とは全く違い、自主的に挑戦しようとすることを後ろからそっと支える、見守る、見てあげることが最も重要な要素です。

十分な安全基地を確保した上で、初めて人間は新しいチャレンジに向かうことができるのです。

例えば、見守っているというメッセージを具体的に伝える場合に有効なのが、「変化に気が付いてそれを伝えること」です。

人は、自分で自分の変化・成長になかなか気付かず、他者から言われて初めて気が付きます。

「前回よりこの点が改善されましたね」「先月は1日かかっていた業務が、3時間でできるようになりましたね」と具体的に伝えることにより、クライアントは成長を再認識し、「自分にできるんだ」という自己効力感を高めます。

それによって、次なるチャレンジに意欲的に取り組むことができるようになるのです。

言葉以外でもアクノレッジメントできる

コーチングでは、対面セッション以外にも電話でコーチングを実施することがあります。

某メーカーの西日本地区の統括部長を務めるC氏の話です。

初回はコーチと直接顔を合わせましたが、実際のセッションは電話によるものだったそうです。

あるセッションの時、C氏はこんなことを言いました。

「支社の部下とのやり取りはほとんど電話だけど、最近電話するのが楽しみになってきました」以前のC氏は電話が苦手で、コーチングを電話で行うことにも少し抵抗がありました。

しかし、予想以上に色々話せるものだと思ったそうです。

「やはりしっかり相槌や反応が返ってくると、安心して色々話せるものですね」電話でのコーチングの場合、対面とは違い資格情報がありませんから、コーチはクライアントの発言内容だけでなく声のトーンや大きさ、話すスピードなど、敏感にノンバーバル(非言語)情報に注目を向ける必要があります。

また、C氏のようにクライアントもコーチのノンバーバル情報を無意識に感じ取っているものです。

ですから、相槌1つでも決しておろそかにせず、「あなたの話をしっかり聞いています」「何でも話していいですよ」というメッセージを伝えながら、安心して話ができるよう心がけましょう。

「所属の欲求」からのアピールを見逃さない

職場で何気なくしている「挨拶をする」「名前で呼ぶ」「相談に乗る」「仕事を任せる」なども、同じ組織の一員として、相手の存在を認める行為の一例です。

所属の欲求が満たされないと、人は存在証明行為を取り始めます。

自分自身の存在を認めて欲しい、気にかけて欲しいとアピールを始めるのです。

コーチングにおいても、仕事の愚痴ばかり言うクライアントや体調不良が続いているクライアントなどは、アクノレッジメントが足りていない可能性がありますから、コーチは「頻繁に連絡を取る」「今の状況を否定せずに受け入れる」「メールには即返信する」など、特に意識をして関わります。

「自我の欲求」を高める方法

コーチは、クライアントが実際に取った行動が、自身の成長や目標達成にとって効果的だった場合には、クライアントの自我の欲求を満たすことでその行動の促進と定着化を図ります。

タカラの賞賛を求める自我の欲求を満たすには、まず「誉める」ことが代表的です。

ただし、誰にでもたくさん誉めればいいというわけではありません。

ほめ方によっては相手のやる気を奪ってしまうこともあります。

では、クライアントの意欲を高めるために、コーチはどんな風に誉めているのでしょうか。

誉めるための3種類のメッセージ

誰かを誉める時、誉め言葉が次々と頭に浮かんだ人もいれば、いつ誰にでも同じ言葉を使っている人もいるでしょう。

コーチはクライアントが目標達成した時はもちろん、セッションで宣言したことを実現した時や目標までのマイルストーンを達成した時、言葉に伝えますが、その伝え方として「YOUメッセージ」「Iメッセージ」「WEメッセージ」という3つのスタンスを持っています。

YOUメッセージはあなた(YOU)のスタンス、「あなた(の仕事)は○○だ」と伝えることです。

Iメッセージは私(I)のスタンスで、相手の行動や存在が自分へどんな影響を及ぼしたのかを伝えるメッセージです。

「参考になりました」「もっと詳しい話が聞きたいです」など、自分が思っていることや感じていることを伝えます。

WEメッセージとは、私たち(WE)というスタンスで自分たちにどんな影響が及んだのかを言及するメッセージです。

「あなたの一言で、この場が和やかになりました」「あなたがいてくれると、会社全体のエネルギーが高まるようです」など、より大きな影響力を相手に伝えるメッセージです。

この3つのメッセージは、どれが良い悪いはありませんが、所属の欲求を満たすという意味でも、他者への影響をより確認できるIメッセージやWEメッセージの方が相手の心に残るようです。

もちろん、ストレートなYOUメッセージを好む方もいますので、コーチはクライアントを誉める際、どのスタンスを取ればより伝わりやすく、次の行動を生み出しやすいのかを見極めるよう意識しています。

プロセスの中で、わずかでも成長を伝える

全てのクライアントが順調に目標達成まで進めばいいのですが、残念ながらそんなことはありません。

特に長期の目標の場合、なかなか達成感を味わえないために意欲を維持することが困難となり、挫折してしまった経験をお持ちの方も多いかと思います。

コーチは、例えその時に成果が出ていなかったとしても、現在までの成長を伝えます。

コーチングによって変化したことやできるようになったことを伝え、認識させるのです。

「これができるようになった」という自己効力感は、クライアントの自信に繋がり、次のレベルのできるようになりたいことへの意欲を高めます。

軌道修正の一例

自分の行動が目標に向けて正しいものなのか不安に感じているクライアントは多くいます。

また、コーチがよかれと思ったことが実は非効率だったというケースも多くあります。

あるコーチのKさんの話です。

担当していたクライアントは転職直後で、昔から何か学ぶ時はノートにまとめて覚えており、転職後も同様の方法を取っていましたが、非常に時間がかかるため業務スピードに影響が出ていたそうです。

Kさんはクライアントに「ノートにまとめることはどんな意味を持っていますか?」と問いかけました。

確かに、まとめることで安心感を得ながらも、「短期間で効率的に学ぶ」という本来の目的とは違う効果の行動を取っていることにクライアントは気付いたそうです。

それをきっかけに、クライアントは重要のことのみ記録することにしました。

非効率な行動をコーチングによって軌道修正したわけです。

コーチは「フィードバック」で気付かせる

自分1人で行動していると、目標までのプロセス中で、自分が現在どのあたりにいるのか、どれほど成長したのか、何が足りないのかを確認しないまま進みがちです。

コーチはクライアントとの対話の中で、これまでのプロセスや行動を検証し、今後着実に目標に近づいていくためには何が必要なのかを明確化していきます。

これまでよりも有効な手段の発見とその実践を繰り返し、軌道がずれていれば修正します。では、具体的にどのように軌道修正を図っているのでしょうか?

その1つしてコーチは、目標に向かって今クライアントがどのような状態にあるのかを気付かせるためにフィードバックをします。

あくまでもクライアントの目標に向けてズレの修正が目的ですから、目標達成、成長に関するものでなければ意味がありません。

伝える内容がクライアントにとってネガティブなものであっても、事実をそのまま伝えることで、クライアントは自分の現状を客観的に捉えられます。

「まだできていないのですか。もっと早く出社した方がいいのでは?」これはフィードバックではなくアドバイスです。

フィードバックは事実を伝えることであり、クライアントから見え聞こえることを客観的事実として相手に伝える方法と、クライアントから感じたことを主観的な事実として伝える方法があります。

「当初の予定より2週間遅れています」「今日は声のトーンがいつもより低いですね」これは、目標に照らしての客観的な事実を伝える例です。

事実を知った時、行動を変えるきっかけになるようなフィードバックでなくては、クライアントにとって単なる批判になってしまいますから、いくら客観的とはいえ、体の特徴や漠然とした雰囲気を伝えるのは効果的とはいえません。

また、「期待していたのに、残念です」「私があなたの部下だったら、今のその言葉は悲しいです」のように、コーチが感じたことを主観的事実として伝えることもあります。

フィードバックの目的である目標へのズレの修正という観点を外すことなく、コーチとして感じていることを伝え、クライアントが行動変化を起こすきっかけを作ります。

フィードバックはタイミングが非常に重要です。

そしてクライアントの行動に対して、できるだけ早い時点で伝えた方が有効です。後で思い出したように伝えるフィードバックは、クライアントにとって受け入れづらいものです。

また、クライアントがフィードバックを求めている時こそ最も効果がありますから、コーチはそのタイミングを見逃さず、適切に伝えます。

更に着実に近づけるための「リクエスト」

目標に向けてのプロセスにズレが生じているクライアントに対し、コーチは行動をリクエストします。

なかなか行動が起きない、スピードが遅いクライアントには、フィードバックとともに具体的な行動をリクエストします。

セッションの終わりに次回までにやって欲しいことを宿題として出したり、その結果をメールで報告してもらったり、鈍った行動に対してリクエストという形で刺激を与えます。

ただし、度が過ぎる強制は信頼関係に影響を与えますから、クライアントとの関係、状況に応じてリクエストする必要があります。

情報が少なく、視野が狭くなっているようなクライアントに対しては、情報提供という形で提案します。

全く新しい役割を担ったクライアントが、未経験の新規事業を任されたなどこれまでの経験のみでは対応できない時は、クライアントの視点を増やすための提案をします。

ただし、「最終的に行動を選択するのはクライアント自身である」というスタンスに立ち、行動の選択肢を増やすことが目的です。

クライアントのことをどれだけ知っているかが重要

クライアントの意欲を上げるための「アクノレッジメント」も、軌道修正を図る「フィードバック」「リクエスト」「提案」も、相手をよく知ること、観察なしでは成し得ません。

相手は何に興味があるのか、日々何を思っているのか、どんな気がかりを抱えているのか、クライアントとのまめな関わりの中で、よく観察して、相手の特徴を理解する必要があります。

そのためにもコーチは継続的に関わる必要があるのです。

セッション以外においても、クライアントにとっての最新情報を入手する、クライアントのライバル企業の状況を把握する、目標達成に有効と思われる情報を収集するなど、コーチはアンテナを高く張り巡らせています。

以上のように、コーチはクライアントと継続的に関わることで、双方向の対話によって気付きを行動へ転換し、継続、定着化させる支援をしていきます。

そして、クライアントと関わる際に「クライアントは必ず目標達成できる、必ず成長する」と信じ、決して諦めないで関わり続けることが、大切なスタンスです。


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